SJET-8163/全面カバー帯/見開き
買取価格10,000円
ジャンル: ロック
子ジャンル: ロック-60〜70年代(国内盤)
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前作『ジョニ・ミッチェル』は、レコーディング当時ジョニと恋人関係にあったデヴィッド・クロスビーがプロデューサーとして彼女に音楽的な手解きや助言を行い、彼女もそれに素直に従い、ピアノ弾き語りで吹き込まれた作品です。彼女の才能の輝きみたいなものはそこかしこに感じられたものでしたが、少し窮屈そうで、その翼はまだ半分折りたたまれたままのような雰囲気がある作品でした。ところが、その次作にあたる本作『青春の光と影』には、もうそんな窮屈さがあまり感じられず、誰かのアドバイスによった雰囲気はなく、独り自分の心の中を深く覗き込み、それを観察しながら音楽というカンバスに鮮やかな歌や演奏で絵を描いていく、そんな印象を醸しています。
後年の傑作アルバム『ブルー』(BLUE)でほぼ完成する彼女の音楽世界が、既にこの作品では雛形となって息衝いています。本作で彼女をサポートするのはスティーヴン・スティルスただ一人(ギターやベースを弾いています)。スティルスもここではその持ち前の鋭角的な音楽家としてのエゴのようなものは感じさせず、ほんのりとその絵に彩りを添える程度の控えめなプレイでサポートしています。
ジョニ・ミッチェル(Joni Mitchell)はカナダに、自分の幼い娘を残し音楽を続ける為ニュー・ヨークへと独り旅立ちました。そこにやって来た朝に、自分の心に写ったものを音楽で描き止めた「チェルシーの朝」という曲がジュディ・コリンズらに取り上げられ、優れたソングライターとして認められることとなります。ですが、彼女が目指したのはソングライターではなく、心の中の心象風景をそっと取り出し、それをカンバスに絵を描くように歌と演奏で映し出す独立した音楽家だったはず・・・。それを目指しやって来たカリフォルニアで、彼女は初めて自分自身の声で「チェルシーの朝」を歌っています。折り畳まれていた翼を静かに広げ、飛び立つ瞬間のような瑞々しさを、本作から感じるのは、そんな彼女の心がこの作品に映されているからではないでしょうか。