結成当初は「日本のMC5」とも称されたファーラウトが、1973年に発売した唯一のアルバム。オリジナルLPは帯と見開き内部ブックレットが付属した完品であればかなりの高額査定が期待できる、日本のロック史上でも屈指のメガレア盤です。
宮下フミオを中心に、元頭脳警察の左右栄一や石川恵らによって結成されたグループですが、本作で展開されるピンク・フロイドや初期のタンジェリン・ドリームなどにも通じる抽象度の高いサイケデリック・サウンドが当時の日本では難解すぎたのか、ほとんど話題にならないまま解散を迎えました。しかし、その後に宮下がファーラウトのコンセプトをより発展させて組んだファー・イースト・ファミリー・バンド(喜多郎を輩出したことでも有名)が世界的に評価されたことによって、原点ともいうべきファーラウトも次第にカルト的な存在価値を高めていったのです。
89年の初CD化は、とくに海外での認知度を高める大きな要因だったと思われます。翌90年には早くもドイツからブートCDがリリース。2000年には同じくドイツから初のアナログ・リイシュー(もちろん海賊盤ですが)もされています。その後もヨーロッパでは何種か非公式LPが出回っていますが、ようやくオフィシャルで日本盤アナログが再発されたのが2019年でした。つまり本作の需要は完全に海外が先行していたといえるでしょう。
なお、宮下はファー・イースト・ファミリー・バンド解散後に宮下富実夫として独自のヒーリング・ミュージックを追求し、2003年に亡くなるまでつねに第一線で活躍していました。そんな彼の功績が近年のニューエイジ・リバイバルによって再び注目されていることもまた、少なからずファーラウトの評価を押し上げているようにも思えます。