GW-4029 帯付/ライナー付/初版定価2,300円
買取価格10,000円
ジャンル: JAPANESE
子ジャンル: ニューミュージック/シティポップ
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シティ・ポップ・ブームというかリヴァイヴァルというか、日本だけでなく海外(その範囲はすごく広くアジア~ヨーロッパやアメリカまで!)におけるこの時代の日本で生まれたポップス(の中のほんの一握りの作品群)に対する関心度が高まっています。なぜ?と考えても答えなど出てきませんが、音楽の創りて手であるアーティストの、とてもパーソナルで自発的な表現に対するリスペクトのようなものがそこには込められているのではないでしょうか。 シティ・ポップの文脈にはあまり登場しませんが(なんででしょう?)、矢野顕子などは自発的な表現という点でみればその典型みたいなアーティストでしょう。彼女は、最初に巨大な自分(自我?)があって、その自我の周りに世界中の音楽の多様性も盛り込みながら自由自在な創作を続けて来た人です。おそらく彼女は誰かに影響されて、というような受動的な感性をあまり持ち合わせていないのでは?と思います。 そして、本作の主人公である大貫妙子も、矢野顕子とはまた違った形で、ひっそりと、慎ましやかに、でも実は頑固に、自分の芯の中にある自我を大切にしながら、その周りをやわらかく包み込むような音楽を創り続けて来た人だと思います。 そんな人達にとって、日本の音楽業界でその姿勢を崩さずに活動を長く続けるというのは何かと障害や軋轢、時に衝突も多くあったであろう事は容易に予測できます。矢野顕子は創作活動のベースを海外に置き、日本に於いては里帰りするような活動を行うという発明でそれを逞しく乗り越えてきましたが(それを可能としたのは、海外に於ける彼女の才能に対する高い評価や尊敬があればこそ)、大貫妙子の場合は、その稀有な音楽個性に対する周囲の共感と協力により、それを乗り越えて素晴らしい音楽を長き渡り創り続けて来た人という印象があります。 本作は、そんな彼女が、長きに渡り彼女の共感者/協力者として共に作品創りを行う坂本龍一とのコラボレーションにより創作した活動初期のアルバムです。この時代に一般的に求められていたシンガー・ソングライター的な佇まいではなく、フュージョン・サウンドを大胆に取り入れたサウンドに乗せて、夢見るようなものではない批評精神すら感じさせる個性的な歌詞を、情緒に流されない意志的なヴォーカルで聴かせている作品です。坂本龍一の編曲力、そして周りに集ったプレイヤーたちの見事な演奏が、そんな彼女の芯のある歌声を見事に浮き彫りにしている本作に対して、時を越えて多くの音楽ファンが(国を超える形で)反応しているのはとても素晴らしい光景です。 この作品を愛している人達は、ジョニ・ミッチェルやローラ・ニーロの作品の中に、普遍的な魅力を見出している人達でもあるでしょう。 最後に、実は矢野顕子、大貫妙子は、お互いを認め合う無二の親友という間柄。ほんとによくわかりますよね、それ。