お世話になります。セタガヤレコードセンター、買取担当です。
さて、本日も最近買取させていただいたレコードの中から厳選して一枚をご紹介させていただきます。
・アーティスト / ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
・タイトル / シューベルト:冬の旅
・型番 / 英HMV/ASD 551 – 552/2LP1組/ステレオ白金ラベル
■参考買取価格 / ¥5,000
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Dietrich Fischer-Dieskau)は、20世紀を代表するドイツのバリトン歌手であり、リート(ドイツ歌曲)の解釈において圧倒的な評価を受けた存在です。1925年にベルリンで生まれ、戦後のクラシック音楽界で頭角を現すと、その深い音楽的洞察力と美しい発声、そして知的かつ感情豊かな表現によって、多くのリスナーと音楽家に影響を与えました。
彼は特にシューベルト、シューマン、ブラームスといった作曲家によるリートの演奏で知られており、その録音は今なおスタンダードとして語り継がれています。伴奏者ジェラルド・ムーアやスヴャトスラフ・リヒテルとの共演も伝説的です。
また、オペラの舞台でも活躍し、ヴェルディの『ドン・カルロ』のロドリーゴ、モーツァルトの『フィガロの結婚』の伯爵、ワーグナーの『さまよえるオランダ人』など、幅広い役柄を演じました。加えて、指揮者としての活動や、書籍の執筆、教育にも熱心に取り組みました。
2012年に亡くなった後も、彼の録音や芸術は多くのファンに愛され続けており、まさに「歌う哲学者」と呼ばれるにふさわしい存在でした。
本日ご紹介のレコードは「ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ / シューベルト:冬の旅」です。
1962年の録音で20世紀を代表する名バリトン、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウによるシューベルト《冬の旅》のステレオ初録音盤は、まさに彼の代表作と呼ぶにふさわしい演奏です。生涯で7回も録音するほど愛したこの楽曲において、本盤は彼が30代後半という声も技術も充実した時期の記録であり、若々しい張りと気力に満ちた歌唱が印象的です。
フィッシャー=ディースカウの演奏は、作品の内面を徹底的に掘り下げることに長けており、表現はきわめて多彩です。強弱のつけ方、テンポの緩急、声質の巧みな変化など、技巧と感情が高い次元で結びついています。加えて、厳格な様式感と鋭い感性が共存し、聴く者を圧倒します。伴奏はやや緊張感を孕んでおり、まるでライブのような臨場感を醸し出しています。
ただし、その表現の濃密さゆえに、一曲一曲が非常に重厚で、聴き進めるうちに圧倒される感覚を覚えるかもしれません。あまりに詰め込まれた情感は、時に過剰にも感じられますが、だからこそこの作品に漂う深い寂寥感や陰影がより際立ちます。聴き終えた後には、まるで秋の夕暮れのような、静かで深い余韻が心に残る、そんな日本人の感性にも通じる「わび・さび」の世界が広がる名演です。
本盤は1963年イギリスのHis Master’s Voiceから発売された2LPです。
発売から半世紀以上経過し、大変希少なため入手するのは大変難しく中古市場の価格は高騰しています
セタガヤレコードセンターでは、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ / シューベルト:冬の旅を買取強化中です。帯付き、状態良好で現在の参考買取価格は¥5,000とさせていただいております。
大切なコレクションをご処分の際はぜひセタガヤレコードセンターにお声掛けくださいませ。