今までECMの日本盤リリースの経緯を本家ドイツECMでのリリースと合わせてみてきましたが、それではトリオ株式会社/TRIO RECORDSが日本国内での製造/販売の権利を取得したのはどのタイミングか、その様子をみてみましょう。前回のリストからトリオ株式会社/TRIO RECORDSの初期リリースを抜き出し、トリオからの初リリースとなる「PA-7070」から「PA-7080」までを補足すると以下のようになります。
1971年5月1日 ECM 1011 David Holland, Barre Phillips – Music From Two Basses
トリオ株式会社 PA-7070
1971年10月15日 ECM 1013 David Holland, Derek Bailey – Improvisations For Cello And Guitar
トリオ株式会社 PA-7075
1971年11月1日 ECM 1015 Jan Garbarek, Bobo Stenson他 – Sart
トリオ株式会社 PA-7076
1971年9月 ECM 1016 Terje Rypdal – Terje Rypdal
トリオ株式会社 PA-7071
1973年1月1日 ECM 1021 Keith Jarrett, Jack DeJohnette – Ruta And Daitya
トリオ株式会社 PA-7072
1973年2月1日 ECM 1023 Paul Bley – Open, To Love
トリオ株式会社 PA-7073
1973年4月 ECM 1024 Gary Burton, Chick Corea – Crystal Silence
トリオ株式会社 PA-7074
1973年6月1日 ECM 1025 Ralph Towner With Glen Moore – Trios/Solos
トリオ株式会社 PA-7077
1973年6月 ECM 1027 David Holland Quartet – Conference Of The Birds
トリオ株式会社 PA-7079
1973年6月15日 ECM 1028 Paul Motian – Conception Vessel
トリオ株式会社 PA-7078
不明 ECM 1030 Gary Burton – The New Quartet
トリオ株式会社PA-7080
1973年に権利を取得し、それ以前にリリースされていた“ECM 1011 David Holland, Barre Phillips – Music From Two Basses”を「PA-7070」、“ECM 1016 Terje Rypdal – Terje Rypdal”を「PA-7071」としてリリースすることでスタート。では、リアルタイムでのリリースはどの辺りからになるでしょう。
ちょっとここに面白い資料があります(「面白い」ですかね…自分は面白いと思うんですが…)。
“PA 7072 Keith Jarrett, Jack DeJohnette – Ruta And Daitya”と“PA-7073 Paul Bley – Open, To Love”の2つのブックレットに記載のクレジットです。
ライナーノーツからトリオ株式会社/TRIO RECORDSの日本国内のECMの販売は“PA-7070 David Holland, Barre Phillips – Music From Two Basses”の1973年の1月21日始まったことが分かります。そして“PA-7071 Terje Rypdal – Terje Rypdal”が1973年2月21日。ここまではOKです。
ですが、“PA 7072 Keith Jarrett, Jack DeJohnette – Ruta And Daitya”のライナーには、「PA-7072」が“Paul Bley – Open, To Love”(実際は「PA-7073」ですし、そもそもこのライナー自体が「PA-7072」の“Keith Jarrett, Jack DeJohnette – Ruta And Daitya”のものです)、そして両ライナーの「PA-7073」が“Gary Burton, Chick Corea – Crystal Silence”(実際は「PA-7074」)となっています。
そして、“PA-7074 Gary Burton, Chick Corea – Crystal Silence”のライナーで修正されて正しい型番号になっています。結局は本家ECMのリリース順となった「PA-7072」から「PA-7074」のリリースですが、ちょっと紆余曲折あったっぽいのが伺えます。
ちょうどこの辺りからドイツ本国でのリリースと合わせて国内盤がトリオからリリースされていったようですね。
そこからは過去作をリリースしたり、ちょっと飛ばしたりしつつ(“ECM 1028 Stanley Cowell Trio – Illusion Suite”は「PA-7082」で直ぐにリリースされますが、“ECM 1029 Jan Garbarek / Arild Andersen / Edward Vesala – Triptykon”は日本盤もUS盤もリリースされませんでした)、幾つかのシリーズ立てをされながら続いていきます。
ちなみにトリオ株式会社/TRIO RECORDS契約前のタイトルで以下のタイトルは、その後にトリオ株式会社/TRIO RECORDSからもリリースされています。
・日本ビクター株式会社 : Mal Waldron Trio – Free At Last / Paul Bley With Gary Peacock – Paul Bley With Gary Peacock, Keith Jarrett – Facing You
・東芝音楽工業株式会社 : Marion Brown – Afternoon Of A Georgia Faun???
・テイチク株式会社 : Paul Bley – Ballads / Bobo Stenson, Arild Andersen, Jon Christensen – Underwear
・CBS・ソニーレコード株式会社 : Circle – Paris-Concert
ワーナーブラザーズ・パイオニア株式会社の2タイトルはその後の国内LPのリリースはありませんでした。“Keith Jarrett – Facing You”は日本ビクター株式会社から一度改めてリリースされましたが、その後、トリオ株式会社/TRIO RECORDSからのリリースもあり。前回の減給のように日本グラモフォン株式会社は引き続きPolydor名義でChick Corea諸作のリリースを続けました。
それでですね、“Marion Brown – Afternoon Of A Georgia Faun”なのですが、トリオ盤の“Paul Bley With Gary Peacock”の帯裏で「リリース予定」とカタログされているのですが、実物を調べた限りでは見つけられませんでした。これって実際にリリースされたのでしょうか…。
1983年にトリオ株式会社/TRIO RECORDSは解散となり、日本国内の権利がPolydorに移り、現在のユニバーサル・ミュージックに至ります。
以上、ざっとECMの日本盤リリースの経緯を見てみました。いかがでしょう。
お付き合いいただきありがとうございました。
追伸 : 以前から結構気になっていたECMのUS盤のPolydorとWarnerの切り替わりもきちんといつか調べたいです。