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Donald Fagen / The Nightflyから見るデッドワックスの“刻印”

Steely DanのメンバーであるDonald Fagenが1982年にリリースしたソロ・ファーストアルバム。ロックファンのみならず、その録音技術の高さからオーディオファンの方からも厚い支持を受ける名盤です。

高音質でバランスのとれたそのサウンドは、エンジニアからはサウンドチェック時の定番として愛され続けています。

基本的にオリジナル盤がその音質の良さの対象となるのですが、その判別はデッドワックス(=ランオフ、ランアウト、送り溝)に刻まれた刻印によって判断されます。

が、まずはオリジナルのジャケットからご紹介します。

「Donald Fagen The Nightfly」の文字がターコイズとブルーの2色になっております。シュリンク付の場合はハイプ・ステッカーまで残っているとなお良いでしょう。そして、オリジナルのインナースリーブが付属しています。

後発になるとジャケットの文字が1色に変更されます。

続いてラベルは白地にボーダーが入ったもの。薄茶色のものもありますが、どちらでも特に問題は無いかと思われます。

刻印とは…

さて、本題の刻印についてですが基本的に“MASTERDISK”刻印、“RL”刻印、“SLM”刻印の3つが両面に刻まれているものがオリジナル盤と言われています。片面のみの刻印や、どれか1つでも欠けているものはオリジナル盤と呼ぶには厳しいかと思います。マトリクスはSH1が初回のプレスになります。

↑MASTERDISK刻印と、その横のRL刻印

↑SLM刻印

↑マトリクス末尾のSH1刻印

厳密な話になりますが、プロモ盤のみ“QuiexⅡ”の刻印と盤が半透明(全部がそうかは不明)になっており、こちらが最高音質とされております。

常々申し上げておりますが、オリジナル盤の定義は個々人の判断に委ねられますので…

一般的には、上記の3つの刻印が揃った盤の事をオリジナル盤とし、通称“Ludwig Hot Mix”と呼びます。

余談ですが、この“Ludwig Hot Mix”はLed ZeppelinのUS盤にもあり、Led Zeppelin/Ⅱの両面RL刻印はラウドカット盤とも言われ、通常のものより高額で取引されています。

では、まずはそれぞれの刻印の意味を簡単に説明します。

“SLM”刻印

Sheffield Lab Matrixの略でSheffield Lab社でマスターを作成した盤という意味になります。

“MASTERDISK”刻印

ニューヨークにあるマスタリング・スタジオMASTERDISKでマスタリングされたものという意味になります。

“RL”刻印

マスタリング・エンジニアBob Ludwig(Robert C. Ludwig)のイニシャルです。より優秀なエンジニアはカッティング時に自分の名を刻む事が許されるのです。

このBob Ludwigという人物が非常に重要なポイントで、“RL”刻印がある=Bob Ludwigがマスタリングを手掛けた高音質なレコードである、というお墨付きになるのです。ジャズのレコードにおけるRVG刻印(Rudy Van Gelder)、ロック・ポップス界でのRL刻印(Bob Ludwig)といった感じでしょうか。日本でいう小鐵徹でしょうかね。

Bob Ludwigの手掛けたレコードは数え切れない程あります。アーティストからの信頼も厚くRollng Stones、Bruce Springsteen、Police、Jimi Hendrix、Eric Clapton、Daft Punk等々、挙げたらキリがなく、そのどれもが世紀の名盤ばかりです。

彼はMASTERDISKとSTERLING SOUNDのどちらでも副社長を務めており、STERLING刻印がある盤にも“RL”刻印の入っている物が多数あります。

以前の Neil Young/Harvest のコラムでもSTERLING刻印は軽くご紹介しましたが、あちらはLH刻印(マスタリング・エンジニアがLee Hulko)です。

Donald Fagen/The Nightflyから刻印の意味について解説しましたが、ロックのレコードにおけるオリジナル盤、高音質盤を見分ける際にはこの“MASTERDISK”刻印、“RL”刻印、そして“STERLING”刻印がひとつのポイントとなってきます。