TBMと表記されるこのレーベルは、日本のBlue Noteとも称される事があり、近年では国内外問わず評価が高まる一方です。
また、それに比例してレコードの価格も上昇の一途を辿っています。
1970年に藤井武、佐賀和光、魚津佳也によって設立され、社長兼プロデューサーを務める藤井武の構想の下、ジャズ評論家として高名な油井正一から紹介された録音エンジニアの神成芳彦と、デザイナー西沢勉の独特のアートワークが加わることによって日本のジャズ・レーベルとして唯一無二の存在となっていきます。これはまるでBlue Noteでいうところの創設者Alfred Lion、エンジニアのRudy Van Gelder、デザイナーのReid Milesという布陣に通じるものがあります。
130以上の作品群の幅は広く、モダン・ジャズ、フュージョン、フリー・ジャズ、ビッグ・バンド、ヴォーカルと、その多さは日本のジャズ・レーベルの中でも一線を画しています。
記念すべき第一弾は「峰厚介/ミネ(型番:TBM-1)」で、当時はまだ新進気鋭の若手でしたが、レコーディングの機会に恵まれていない実力者たちを見出し、積極的に活躍の場を与えるというTBMのスタンスの表れと言えるでしょう。これは当時としては革新的なものであり、後進の発展、ひいては現在の日本のジャズ・シーンに大きく貢献しています。
鈴木勲、山本剛、中本マリ、福村博、土岐英史、植松孝夫、中村照夫、大友義雄、水橋孝らが、初リーダー作をTBMから発表しており、今日もなお現役で活躍されている方が多くいる事から、その先見性の高さは疑う余地がありません。
峰厚介 / ミネ
TBMリリース第1弾のアルバム。※写真は再発盤になります。
土岐英史 / TOKI
山下達郎バンドでもおなじみの名プレイヤー。残念ながら本コラム執筆時に鬼籍に入られました。
福村博クインテット
自身初のリーダーアルバムはTBMからリリースされています。
中村照夫 / ユニコーン
諸作品の中でも海外からの再評価が早かった人気盤。
しかしながら、70年代当時の評価は現在のように高くはなく、プレスされた枚数もあまり多くはありませんでした。
その稀少性と近年の再評価の流れが中古レコード価格の上昇に拍車をかけている状況となっています。
ジャズのレコード全般に言える事ですが、基本的にはオリジナル盤が高額になります。
さらに国内盤の最大の特徴である帯と、TBM独自の冊子(通常のレコードでいうところのライナー)が付属していれば完璧です。
TBMのレコードに付属している冊子。
オリジナルが高いのはTBMも例外ではありませんが、その人気ぶりから最近では再発盤も高額になってきています。
山本剛 / ミスティ
上がオリジナル盤。下のグレーの帯の方が再発盤。どちらも大差なく高額です。
再発盤の見分け方としては、まず型番号の違いが挙げられます。
ジャケットのデザインは概ね変更されないのですが、よく見れば型番号の表記だけしっかり変わっています。
鈴木勲 / Blow Upで比較してみます。
基本的にはTBM-1から順に増えていく数字2桁盤と、1000番台、3000番台、4000番台、5000番台がオリジナル盤と考えられます。
三木敏吾 / 北欧組曲
1000盤台がオリジナル。
三木敏悟 / Back To The Sea
5000番台がオリジナル。
三木敏悟は比較的入手しやすく安価だったのでTBMのレコードの良心的な存在でしたが、こちらも近年徐々に値段が上がってきています。
セカンド・プレス以降は2500番台になります。タイトルによってはジャケット写真が変更されている物もあります。
中本マリ / Unforgettable
オリジナルと再発で写真が変更されています。
鈴木勲 / オランウータン
こちらも再発盤でオリジナルとジャケットが異なります。
手元にオリジナルが無かったので画像がありませんが、そのまんまオランウータンがヘッドフォンをしているジャケットです。
TBM Best 1500 Collectionという再発のシリーズも出ており、“15PJ“から始まる型番号になります。
日野元彦 / 流氷
このシリーズの帯は分かりやすいですが、デザイン的にはいまいちです。
次からは再発盤とオリジナル盤が混在します。
日本フォノグラム傘下になると“TBM(P)“からの型番号になります。
原信夫とシャープス&フラッツ / 活火山
高柳昌行 / クール・ジョジョ
82年頃からはTRIO Records傘下になり“PAP“から始まる型番号になります。
中本マリ / マリ・ナカモトⅢ
リリース時期や発売元によって帯のデザインも変更されていますし、型番号の抜けや変遷も興味深いところではありますが、非常にややこしいので悪しからず割愛させて頂きます…
先述したとおり、再発盤でも現在は高価な物が多くなってきております。
ただ、近年でも再発されておりますので、流通量が増えて価格が落ち着く、という事も無きにしも非ずではあります。
売却をご検討の方は機を逃さないようご注意下さい。