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優秀録音の世界 – 第18回 イッセルシュテット/ベートーヴェン/交響曲第5&8番

オーディオ愛好家、とりわけリファレンス・ディスクにLPを選択される方を虜にし続ける優秀録音盤。 弊社の買取で入荷したクラシックLPを中心としたタイトル、そして長岡鉄男氏推薦盤やTASリスト掲載のLPレコードをご紹介して参ります。

レーベル:英DECCA
作曲家/タイトル:ベートーヴェン/交響曲第5番&8番
指揮:イッセルシュテット

1968年、9月16日~21日、ウィーンのゾフィエンザールにて録音。オケはウィーン・フィル。
DECCAの名エンジニアであるケネス・ウィルキンソンが録音エンジニアを担当した優秀録音作品。
本作を含むベートーヴェンの交響曲全集は、ウィーン・フィルにとって初めての全曲録音。
イッセルシュテットも英DECCAでの録音は、バックハウスとのベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集と今作のみ、更に普段指揮を執ることのなかったウィーン・フィルとの大変貴重な録音となっております。

さて、この録音場所であるウィーンのゾフィエンザール。
オーストリア皇帝のフランツ・ヨーゼフ1世の母、ゾフィー大公妃の名にちなんで名付けられ、1826年に建てられた施設で、元々温水プール施設でした。
しかし、冬場はその広大な空間を利用し、舞踏会場として古くから使われており、R.シュトラウスを始めとするワルツ大作曲家による名作の初演会場としても使用されてきました。
そして1950年代後半より、英DECCAはこの巨大な施設をウィーン・フィルの録音施設として使用し始めます。

当時、ウィーン・フィルは録音向きではなかったウィーン楽友協会(ムジークフェライン)のホール(ザール)から、ゾフィエンザールへと録音場所を移動するのを頑なに嫌がったそうです。

また録音の際、時々警察官による通行止めをし、外部からの音を遮断しないと録音が出来なかったらしく、録音もなかなか苦労したことが窺えます。

しかし、結果として残響が多く、ときに納得の行く録音とは言えなかったムジークフェラインザールでの録音よりも、ゾフィエンザールは床面のプールによる空間と、高い天井によって温かみがありながら、よりクリアな音質を得ることが出来たそうで、80年代中盤辺りまでDECCAは、ほぼ独占してこのホールを使用していたそうです。

ゾフィエンザールは残念ながら2000年前半に火事で大半の箇所が焼失してしまいました。

今回お譲り頂きましたのはED3のステレオ初出盤。素晴らしいオーディオ・ファイルとなっております。